昔から「十年一昔」と言いますが、昨今の中国は「十ヶ月一昔」と言うぐらいに変化のスピードが速く、以前の常識が全く通用しなくなっています。
昨年と一昨年の11月に武夷山を訪問したのですが、わずか1年の間に風景は様変わりしていました。
風景区内に溢れていた茶葉会社の看板
観光客が多く訪れる、武夷山風景区。
2017年に訪問したときは、ここには観光客向けの様々な看板が溢れていました。
なかでも、正岩茶の産地として知られる「三坑両澗」の地域。
「ここが我が社の茶園です!」とPRをしようという意図なのか、電話番号やQRコード付きの看板が溢れるほど立っていました。
このような宣伝は、西湖龍井の龍井村・老龍井などでも行われていますが、自社が所有する茶園(※)であることをPRするための、非常に理に適った広告宣伝です。
※実際は、同じ茶園に複数の茶業会社の看板が立つなどしていましたので、その茶園の所有者(中国の場合は土地は国有なので、利用権所有者)は別にいて、その生葉の販売先が賃料などを払って掲示していたものと思われます。
また、大紅袍の母樹(原木)に至るまでの遊歩道の脇は、品種園になっています。
ここは最大手の武夷星茶業が管理を請け負っているということもあり、同社のロゴマーク入り説明看板が立っていて、品種の特徴を覚えるのにはうってつけでした(※)。
※説明と異なる品種も植わっていたりするので、100%当てにはなりませんが。
撤去された看板
このように少なくとも2018年6月頃までは、武夷山の風景区の中には、お茶に関する看板がこれでもか!というほどに溢れており、岩山と茶樹だらけの中でも良いアクセントになっていました。
しかし、2018年11月に出かけてみると、これらの看板がほとんど撤去されていました。
その代わりに風景区の入口には、このような真新しい看板が立っていました。
美しい自然が武夷山の富の源泉であるから、私企業が宣伝的に風景区を活用することは罷り成らん、ということのようです。
中国は、「上に政策あれば、下に対策あり」と言われることもあるように、抜け道がよくあるものなのですが、厳しく締めるときはビシッと例外なく締めることがあります。
特に昨今は習近平指導部の下で、「悪を叩け」というキャンペーンが張られ、街の目立つところにスローガンが掲示されています。
昨今は、「ブランド化」ということに力を入れる茶業者が多く、今回の看板の撤去は痛手でしょうし、農家側に入る看板の使用料収入も途絶することになります。
しかし、「自然を大切にしよう」というのは非常に真っ当な理屈ではあるので、さすがに異を唱えられる雰囲気では無いのかもしれません。
このように政策などの影響で、中国はガラッと景色が変わってしまうことがあります。
わずか1年でこの変わりようなのですから、中国の変化のスピードについていくのは簡単なことではありません。
10年以上も前の情報では役に立たないことも多く、やはり新鮮な情報をどんどんキャッチしに行き、頭の中身を都度書き換えていかないと、遅れるばかりという印象を強くしました。
次回は2月28日の更新を予定しています。