中国茶のセミナー活動を本格的に始めてから、約2年半になります。
当初は東京だけで開催していましたが、今では北は札幌から、南は福岡、さらには台北まで。
あちこちの街にお邪魔しております。
何でも詳しい?
入門者向けの講座は教えている先生方がたくさんいるでしょう、という観点から、私が開催しているセミナー・ワークショップは、どれもややマニアックな、突っ込んだ内容のものが多くなっています。
そのためか、受講いただいた方から「中国茶のことは、なんでもご存じなんじゃないですか?」と言われることもあります。
が、実のところは冷や汗をかきながら、お話ししているようなところがあります。
お茶の世界を山登りに例えるならば、私が位置しているのは、せいぜい山の1合目と2合目の間くらいでしょうか。
この位置では、とてもとても「何でも知っています」とは言えません。
「この話なら、あの人の方が詳しい・・・」と知人の顔を思い浮かべることも多々あります。
何でも詳しいわけでは、決してありません。
そのような神様のような存在にならないとお話しできないというのであれば、おそらくお茶の話をする方は、みな仙人のような方ばかりでしょう。
得意と言えることは・・・
私が少しだけ得意としていることがあるとするならば、”相対的に”詳しいことが少しあることと「難しい話を分かりやすく伝える」ということだと思います。
「分かりやすく伝えること」については、かなり年季の入ったキャリアがありますので、それなりに自信があります。
一番最初は、大学時代に4年間やっていた個別指導の塾講師です。
今はどうか分かりませんが、当時の個別指導の塾というのは、大人数の講義形式の授業についていけない生徒さんが多くいました。
理解のスピードが違う場合もありますし、根本的に基礎が抜けている場合や、集中力が続かない、など。
生徒さんによって、抱える問題はさまざまあります。
初見の生徒さんであっても、そのあたりの問題点や生徒さんのキャラクターを、授業の最初の15分ぐらいで見極め、それに合わせて教え方をカスタマイズします。
基本的には何かしら課題のある生徒さんが多かったので、何度かの授業でそこが解消されると、グンと学力は伸びるものです。
こういうトレーニングをずっとやっていたからか、「何を理解していないか掴む」「かみ砕いて話す」のは、以後も得意分野ではあります。
社会に出てからは、経営コンサルティング会社です。
経営コンサルティング会社というと、外資系で横文字をズラズラと並べた、なんだか良く分からないような話をする人、というイメージがあるかもしれません。
が、私の働いていた会社の顧客は、中小企業の経営者の方が中心です。
こうした社長さんのところに信用金庫の営業マン(渉外さんと言います)と一緒に出かけていき、経営相談を承るというのが、新卒の私に課された業務でした。
このような方々に、横文字のかっこいい理屈の話をしたところで、聞いてなどもらえません。
日々の商売をどうするか、と考えている方のところで、流行のITを使った経営について・・・のような話をしたところで、響くわけはないのです。
最初は、身近な経営上の悩みの話で始まりながら、その中に経営の本質を突いたような話を盛り込み、分かりやすい言葉で伝えていくこと。
そうすると、最初は信金の担当者の方ばかりを向いていた社長が、こちらの話の方に関心を示すようになります。
「若いのにしっかりしているな」と思ってもらわないと相談になりません。分かりにくい話は御法度です。
毎日の仕事がこういうものでしたので、さすがに鍛えられた感じはあります。
さらには新しい事業について、その事業分野を知らない方に特徴や特色を整理してお話しし、そこで成功を収めるためにはどうしたら良いか?ということを流れとして提案するセミナー講師もしていました。
専門外の方に、論理立ててポイントを絞って分かりやすく伝える、というのは、専門家の方に詳しい内容を伝えるのとは、また違った技術が必要です。
どのような順番で話を構成し、理解を深めていくかをきちんと設計して、資料やスライドを準備するのです。
難しいことも分かりやすく
こうしたバックグラウンドがありますので、私のセミナーは、これまでのお茶の講座とは少し毛色が違うように感じられるかもしれません。
他の先生方とできるだけ重ならないような内容の講座にしないと新規参入者としては意味が無いので、少し突っ込んだ内容を話します。
そのため、ある程度詳しい方が参加されると「私は分かるから良いけど、こんなに高度な内容では、初心者はついてこられないのでは?」と心配されることもあります。
が、最近はいわゆる初心者の方も多く参加いただいているのですが、感想は概ねポジティブな評価です。
「ちょっと勉強していたので、ちょうど良かった」という反応だったりします。
同じ講座の中でも、響くポイントや気づきが、それぞれの水準に応じてあるものなのです。
今までの勉強の仕方であれば、随分先に行き着くものであっても、「最初から教えてもらっていれば・・・」と後になって感じることは結構あるものです。
それは、それまでの説明の仕方が、専門用語の多さだったり整理が不十分だったことから、ある程度の知識ベースが無いと伝えられない、と考えられていた、というものだったりします。
実際、私も「最初にこれを教えてもらっていたら、こんなに回り道しなくて済んだのに・・・」と思うことは非常に多くあります。
少なくとも、1合目の部分まで登るのであれば、麓からこのようなルートを通って登っていけば、安全で楽しく、見どころも満載!というような登山ルートを示していくことが、少し山の上の方にいる人たちの役割なのではないかと思います。
そうした登山ルートの整備だったり、登山ガイドブックのようなまとまった情報、さまざまなツール類を適切に用意しておくこと。
これがきちんと出来ていれば、きっとお茶の山に登ってくる新しい人たちも増えて行くのではないかと思います。
どんなに見晴らしの良い山だよ、と言われても、どこが登山道かも分からないようなケモノ道を歩け、というのでは、なかなか登山者は増えていきません。
次回は、8月31日の更新を予定しています。