第11回:2017年の中国の緑茶は?

穀雨の時期を挟み、駆け足で中国を回ってきました。
今回は番外編として、現地の状況を少しお伝えしたいと思います。

梅家塢にて

 

本格的なシーズンインが遅れた年

今年の緑茶、それも江南地域のお茶に限ってということになりますが、今年は寒さの影響で本格的なシーズンインが遅れた年になったようです。
西湖龍井の一部の地区では、3月19日前後に少量摘み始めましたが、その後の気温が思うように伸びず、本格的な茶摘みは3月26日頃からになったとのことです。

茶摘みのスタートがずれ込んだことから、いわゆる明前茶の産量は減っていました。
ただ、気温が低かったことから、品質そのものは良好、というのが現地の公式な見解のようです。

西湖龍井の主要な産地である、一級保護区の龍井村、翁家山、梅家塢の茶農家を回りましたが、細かな新芽のお茶は既に売却済み。明前でも、やや大ぶりのお茶だけが手元に残されているという状況でした。シーズンインが遅れた分、売れそうな見栄えの良いお茶は、激しい争奪戦になっていたようです。

江南地区の雄である龍井がこのような状況でしたので、その他の産地も同様に遅れが目立ちました。
碧螺春は3月16日に少量の茶摘みが出来たものの、本格的なシーズンインは3月23日以降に。
安吉白茶は3月28日、六安瓜片が4月15日と、概ね8~10日ほど遅れ気味であるというのが茶商の話でした。
※太平猴魁はさらに遅れて4月23日頃になるのではないか、とのことで、今回は品物がない状況でした。

価格については、あまり大きくは変動がなかったようですが、やはり明前のお茶に関しては、産量が少なかった分、値上がり傾向のようです。
市場の要請によって、安いお茶も品揃えに加えている茶業者もありましたが、茶業者自身がこうした低価格製品に、あまり乗り気では無い様子も感じられました。

 

存在感を増す「茶文化」

穀雨の日は、中国では「全民飲茶日」(お茶を飲む日)に指定されており、お茶に関連するイベントが多く開かれます。
上海の豫園でも、大手の茶業者や生産者がブースを構えて、お茶の販売を行うイベントをしていたほか、杭州きっての観光地になっている清河坊(河坊街)では、かなりのスペースが割かれ、西湖国際茶文化博覧会、清河坊民間茶会などが開催されていました。

元々、杭州は「中国茶都」を打ち出し、かなり茶のプロモーションに力を入れている都市ではありました。
が、茶業の発展に伴い、予算も増額しているのか、かなり派手なプロモーションが行われ、一般庶民が茶に寄せる関心も、以前に比べると格段に高まっているように感じました。
ブースに立ち寄る人の数が、明らかに増えているのです。

ややもすると「商業化した」「金儲け主義になった」と揶揄されることも多い中国の茶業ではありますが、関係者がきちんと収益を得られる産業にならないと、結果的に普及に繋がらないのだな、と思います。

茶農家のところに行けば、「街中の店では、うちのお茶を2倍とか3倍で売っている」と恨み言(うちで買えばお得だという、観光客へのセールストークでもありますが)を聞かされることも多いのですが、彼らがマーケティングコストに投資しているからこそ、茶の需要がこれだけ増えているわけです。
中国で行われている茶のマーケティングは、少し派手すぎるように感じるきらいはありますが、適正なマーケティングコストを投資するという考え方は、日本でももっと検討されて良いのでは無いかと感じました。

何でも安く売ることばかりが正義ではありません。
必要最低限なマーケティングコストまでも削減して、低価格を訴求することは、産業の破壊に繋がります。
企業の目的は「顧客の創造」であり、それに必要な投資を怠れば、市場は縮小し、苦しむことになります。
そんな当たり前のことを、現地のイベントを見ていて感じました。

 

次回は5月1日の更新を予定しています。

 

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