先週、幕張メッセで開催された国際食品展・FOODEX2018に行ってきました。
例年、中国茶と台湾茶に絞って回っていますので、少し感じたことを記しておきたいと思います。
中国からの出店は、相変わらず少ない
ここ数年の傾向ではあるのですが、中国からの茶業者の出店はごくわずかでした。
お茶を置いてはいるけれども、メインはキノコの販売という企業などもあり、お茶は決して主力では無いようです。
既存の取引先がある茶業者を除けば、もはや日本は市場として見做されていないということなのだろうと思います。
大手としては、湖南省の中茶が出展し、香港で人気だという「通茶」の試飲を行っていました。
健康機能面でのPRであれば、日本市場にも可能性があるかも、という狙いだったようです。
小規模なメーカーとしては、山東省日照市の日照瀏園生態農業有限公司が出展していました。
同社は”瀏園春(浏园春)”というブランドで商品を展開しており、緑茶と紅茶を生産しています。
緑茶は、2016年の世界お茶まつりで開かれた世界緑茶コンテストで金賞も獲得されたそうです。
それもあっての今年の出展だったようです。
同社の茶園は、きちんと生態系を維持した松林の中に設けており、国内の有機認証のみならず、アメリカのUSDA、EUの有機認証、日本のJAS認証も取得しているとのことでした。
緑茶を試飲させてもらいましたが、丁寧に茶作りを行っていることが感じられ、日本人の方の口にも合いやすいお茶でした。
とはいえ、1斤のお値段を聞いたところ4500元(500gで約76,500円)ということなので、なかなか日本市場では難しそうです。
オーナーと話をしたところ、「向こう(日本の茶業者)のブースも見たけど、日本には高級茶の市場が無いね」と語っていたように、これが偽らざる本音でしょう。
高度加工した茶製品も
今回の中国からの茶業者で比較的目立ったのは、お茶を高度加工した製品を並べている茶業者です。
お茶のパウダーはもちろんのこと、カテキン抽出物などの加工品をプロモーションしていました。
江西省から出展していた業者の話によると、緑茶だけでなく、黒茶、烏龍茶などから、様々な成分を抽出して製品化しているとのことでした。
現在、中国ではこうした高度加工を行って、機能性食品として売り出す方向性も積極的に政府が支援しているそうです。
とにかく、お茶の生産力にかけては圧倒的な世界ナンバーワンが中国であるので、将来的には、この分野は中国企業の独壇場になってしまいそうな印象を持ちました。
問題点が噴出している台湾茶
台湾ブースは、より多く20社近くの茶業者が出展していました。
多くは日本に既に代理店を持っている問屋系の茶業者が中心でしたが、各県のブースでは自産自銷(農家直売)を掲げる茶業者も出展していました。
さまざまな事業者のお茶を一度に飲み比べられるというのは、あまり多くない機会なので色々と回って試飲してみました。
比較的手頃な価格帯のお茶については、安定した品質の茶葉を提供している企業も多かったのですが、看板になるであろう高山烏龍茶は品質にかなりのバラツキが出ていました。
茶摘みの不安定さ(茶摘み人の技量不足、適切な摘み期を逃した茶葉など)に加えて、製茶工程の問題(発酵不良、圧茶機の使用など)や仕上げの不足(自産自銷ゆえの問題)など、ある程度訓練された人ならば簡単に分かるような問題点を感じるお茶がかなり多くありました。
全般的には味わいが薄くなり、それをカバーするために茶葉量を増やして対応する・・・という、あまり褒められない流れになっているように感じます。
正直、展示会という場で、ここまで多くの問題点のあるお茶を飲むとは思いもよりませんでした。
懸念されてきた台湾の茶業界の様々な問題点が、もはや技術や工夫ではカバーすることが出来なくなり、お茶の品質にハッキリ表れるようになった、ということかもしれません。
茶摘みと製茶工程の問題の多くは、人手不足にあります。
人手不足というと聞こえは良いのですが、その原因は(日本でも同じですが)往々にして「労働に見合った対価=賃金が支払えない」という経済的な問題に帰結します。
要するに、茶価が労働コストに見合わない水準であるということです。
コストを切り詰めるためには、さまざまな点で妥協を余儀なくされることになります。
結果、茶葉の品質の低下が避けられなくなっているのだと思います。
台湾も景気が良いわけではありません。
消費者は価格に敏感なため、卸も買い取り価格を下げることはあっても、上げることはまずありません。
それを積み重ねていった結果が、現在の状況です。
中国の場合は、都市と農村の格差是正という政府の政策もあり、労働コストをどんどん茶価に転嫁する方向で動いています。
その結果、日本の水準から見れば、信じられないような価格がつくお茶が多数出てくるようになりましたが、それを許容する消費者層が育っているとも言えます。
中国と台湾のブースを比較しただけですが、「産業としては、どちらが健全なのだろうか?」と考えさせられてしまいます。
次回は3月20日の更新を予定しています。